想像力と声で

物語を体験する朗読

小島 香奈子

「朗読ここ・からあなたへプロジェクト」の代表を務め、
福岡で精力的に朗読活動を行っている小島香奈子氏。

この夏、プロジェクトが主催している
『朗読とギターで奏でる物語』企画の一環として、

2024年7月13日(土)~14日(日)に、
洋館で聴くサスペンス」の朗読とワークショップが開催される。

洋館でのサスペンス朗読という、非常に興味をそそる企画。
ぜひ詳細をお聞きしたくなり、インタビューを申し込みました。

【インタビュー目次】

「朗読」について

きっかけと
プロジェクトについて

「洋館で聴くサスペンス」
について

最後の質問

「朗読」ついて

-インタビューを受けていただき、
本当にありがとうございます。

実は私、朗読鑑賞をしたことがなく…

まず、「朗読」とはどんなものか
ご紹介いただけますか?

私の考える【朗読】とは、読み手の想像力と声の力によって、文学作品の世界を再構築し、聴き手と共に、楽しみ、味わうものです。

私はこの状態のことを、いつも【物語を体験する】と表現しています。

また、《文学作品をいかに解釈し、いかに表現するか》ということが、お客様の鑑賞の対象になる表現だとも考えています。

朗読は、クラシック音楽の演奏と共通点がたくさんあります。

同じ曲でも演奏家が変わると、まったく異なる曲に聴こえることがありますよね。

文学(楽譜)をいかに解釈し、いかに表現するか。
解釈にも表現にも、技術と感性が必要です。

そして朗読も、クラシック音楽と同様に【再現芸術の一種】だと私は考えています。

-文学作品を楽しむ方法として
「読書」もありますね。

同じ本や物語。
朗読で聴くのと、自分で読むの。
何が大きく違うでしょうか?

自分で読むときには、作品と自分が直接つながっているので、自分の感性と解釈のみで作品を受け取ると思います。

一方で、朗読を聴くときには、聴き手は、他者(読み手)の解釈と読み手の声を通して、文学作品に触れることになります。

朗読する声には、自ずと読み手の感性や人柄、人生経験、その日の体調や生き様などがすべて滲み出ますから、聴き手は、他者(読み手=自分以外の人間の存在)を潜り抜けてきた文学作品を、他者の声によって、聴くことになります。

それは、ひとりで黙読するときは圧倒的に異なる【体験】と言えます。

また、【人間の声によって語られる物語に耳を澄ます】ことは、逆説的に、不思議なほど、自分の心の奥を見つめることにつながります。

上手くいけば、誰かの朗読を聴くことによって、自分がどのような人間なのかを発見することさえあります。この体験は、ひとりで黙読してもなかなか得られるものではないと私は考えています。

-自分とは別の感性を通して
物語を聴く。

読書では気付けなかったことに
ふと気付くような。

自分と作者と語り手、
3人でのコミュニケーションのような。

そんな体験のような気がします。

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きっかけと
プロジェクトについて

-では、小島さんが朗読の世界に入られた
きっかけを教えていただけますか?

本格的に朗読表現を学び始めたのは、高校で放送部に入部してからです。

ひとつ上の学年に、後に放送部の甲子園・NHK杯全国高校放送コンテストで全国2位になる先輩がいて、この先輩の朗読を初めて聴いた時に、雷に打たれたような衝撃を覚えたことが、朗読に夢中になるきっかけでした。

しかし、今にして振り返ると、、、

小学校2年生の3学期頃。国語の時間に『スーホの白い馬』を音読した時、先生や友達にものすごく褒められたんです。

宿題で家でも『スーホの白い馬』を音読していると、両親もすごく褒めてくれて。

特に、普段は滅多に褒めてくれない父がすごく褒めてくれたことは、その後もずっと忘れられない経験となりました。

そしてその後は、国語の教科書の音読命!! みたいな小学校時代・中学校時代を送っていました。

また、小学校5年生頃から、まわりの人達に声質を褒められることが増えてきて、その頃から、将来はなんらかの形で、表現として声を使う仕事に就きたいとは思っていました。

-音読、私も小学生の頃やりました!
しかし誰かに特別褒められたことは
なかったような…(笑)

小島さんの音読には、きっとその頃から
何か伝わるものがあったのですね。

そして今、思い描いた将来を形にし、
朗読ここ・からあなたへプロジェクト
の代表を務められていますね!

立ち上げられたきっかけは
何だったのでしょうか?

単なる字面の音声化ではなくて、

【自分の想像力と声とで、文学の世界を再構築する】【物語を体験する朗読】のおもしろさ、豊かさ、奥の深さ、素晴らしさを、ひとりでも多くの方にお伝えし、体験していただきたいと思ったからです。

朗読というと、わりと多くの方が、
《文章を、噛まずにスラスラと、淡々と読み上げる行為》
だと思っておられるのではないかと思うのですが、、、私は、すこし違ったスタイルで朗読しています。

私が提唱しているのは、

【自分の想像力と声とで、文学の世界を再構築する朗読】 【物語を体験する朗読】です。

この私のオリジナルメソッドを、ひとりでも多くの方にお伝えし、体験していただき、楽しんで頂けるようにと思っています。

-具体的な活動内容を、
教えていただけますでしょうか?

・朗読公演(お客様に朗読を聴いて楽しんでいただく)

・朗読ワークショップ(私のオリジナルメソッドによる朗読に、参加者の方に実際に挑戦していただく)

・朗読講座(私のオリジナルメソッドを、よりじっくりと受講生の方にお伝えできる)

などを、企画・演出・出演・運営・広報しています。

特に、私は朗読イベントが大好きなので、朗読公演と朗読ワークショップをたくさん開催しています。

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「洋館で聴くサスペンス」
について

-ここからは、今回の企画について
お聞かせください。

まず、企画の経緯を
教えていただけますか?

おかげさまで、国の重要文化財である旧福岡県公会堂貴賓館様には、2019年〜毎年夏頃・冬頃の年2回、朗読公演と朗読ワークショップ開催のオファーをいただいているんです。(コロナ禍の2020年のみ休演)

夏と言えば、やっぱり、怪談ですよね(笑)

しかし、毎年、全話が怪談だと、常連のお客様が飽きてしまうので、、、YouTubeでは人気があるものの、リアルな朗読イベントではなかなか扱われることの無いジャンルである、

◆ミステリー
◆サスペンス

にも、昨年から挑戦しはじめた感じです。

ハラハラ・ドキドキ・ゾクゾク…で、少しでも猛暑を吹き飛ばしていただきたいな、と思って。

-内容はドキドキのサスペンス。

中学生以上推奨ということで、
気になる方もいると思うので、
率直にお尋ねします!

怖いですか…?

怖いです!!
と、言い切りたいところですが…

ひとくちに【怖い】と言っても、恐怖にも多様性があって、さまざまな怖さがありますよね。

たとえば、今回のプログラムで言うと、夏目漱石『夢十夜』第三夜は、完全なる怪談ですが、

山川方夫『歪んだ窓』は、生きている人間の方が、幽霊よりもよっぽど怖い…と感じる話ですし、

海野十三『殺人の涯』は、悪夢と言いますか、気がついたら異次元に迷い込んでしまったような怖さ…どこまでが現実で、どこからがそうでないのかがわからないような怖さがあります。

しかも、この『殺人の涯』は、表現の仕方によっては、ホラーにも喜劇にもすることが可能なお話なんです。まさに、読み手の腕の見せ所の作品ですが、私は今回は、恐怖の中で、お客様が思わずクスッと笑ってしまうような表現を目指しています。

そして、後半の大下宇陀児『金魚は死んでいた』は、《 耳で聞く火曜サスペンス劇場》のイメージです。

昭和中期の空気感が、昭和生まれにはどこか懐かしい……殺人事件が起こっていて、3人の容疑者も登場して、緊張感もあるのに、どこか、ほのぼのするところもある…という、、、さまざまな要素のある作品だったりします。

最初から最後まで、全作品通して聴いていただくと、

【恐怖にも多様性がある】【ハラハラ・ドキドキ・ゾクゾクにも、いろんな種類がある】ということを

感じて頂けるのではないかな、と思っています。

-なるほど!
怪談話が苦手な私でも、
こういうサスペンスなら
興味を持って聴けそうな気がします!

では企画について、もう1つだけ。

朗読ワークショップも開催されますが、
こちらも中学生以上が良いですか?

小学校の国語の教科書に掲載されてある、児童文学の名作をテキストに扱った回では、小学校2年生〜2時間のワークショップを最後まで楽しんでくれましたが、、、

今回は、朗読ワークショップも、出来れば中学生以上推奨です。

残酷な場面はありませんが、2時間と長時間であること、

また、怪談特有の緊張感が、お子様にはすこし辛い可能性があるかな、と思いますので、、、 朗読歴から言いますと、初心者の方から上級者の方まで、どなたでも大歓迎です!!

-では、小学生の方や、
怖い系が苦手な方のために、

今後の朗読鑑賞機会がありましたら、
ぜひご紹介お願いします!

◆2024年10月5日(土)in箱崎水族舘喫茶室

朗読音楽会『赤いろうそくと人魚』

月琴・リュート奏者の永田斉子さんと、月琴にまつわる作品の朗読やトーク、児童文学の名作・小川未明の『赤いろうそくと人魚』をお届けする予定です。

◆2024年11月17日(日)in箱崎水族舘喫茶室

『朗読とギターで奏でる物語』〜夢野久作に捧ぐ〜

ゲストミュージシャン:岩松知宏(クラシックギタリスト)

福岡市にゆかりのある作家・夢野久作の作品を、夢野久作文学にご縁の深い会場・箱崎水族舘喫茶室にて、

福岡市を拠点に活動する小島香奈子(朗読家)と岩松知宏(クラシックギタリスト)のふたりのコラボレーションでお届けします。

プロの朗読とギターで再構築する夢Qワールドを、お楽しみいただけます。

-ちなみに、怪談大好き!という方には
8月25日(日)に、無伴奏での
怪談話の朗読があるそうです!

こちらも情報がわかり次第
当サイトで掲載いたします!

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最後の質問

-では、最後のご質問です。

今は、自宅にいながら映画鑑賞も
買い物もできてしまう時代です。

そのような時代にありながらも、
わざわざ劇場などに足を運んで、

生の演奏を聴きに行く。
生の舞台を鑑賞する。

その場で体験することでしか
得られないものとは、
何だと思いますか?

五感ぜんぶをフルに使う、リアルな感動。

オンラインで共有できるのは、今はまだ、視覚と一部の聴覚のみですよね。

匂い、温もり、肌で感じるもの、

演者の加工されていないありのままのビジュアル、、、

演者はバーチャルな存在ではなく、本物の人間だと感じることができる。

液晶画面の向こう側ではなくて、目の前にいること。

同じ時間と空間を分かちあい、同じ空気を吸っていること。

リアルでしか経験できないことは、筆舌に尽くしがたいです。

ありがとうございました☆。.:*・゜☆。.:*・゜


拙い質問にお答えいただき、
本当にありがとうございました。

「本の内容を知る」
という意味だけなら、
読書も朗読も同じでしょう。

けれど、内容を知るだけが
本の全てではない…

きっとそんな体験ができる
今回のサスペンス。

とても楽しみです!

サスペンスを洋館で

『朗読とギターで奏でる物語』
~洋館で聴くサスペンス~

2024年7月13日(土)~14日(日)

旧福岡県公会堂貴賓にて